年齢の壁は本当か(後編)

前回のコラムでは35歳、あるいは45歳といった転職における「年齢の壁」が人数ベースでは無くなってきていること、誤解のないように言い換えれば、長期トレンドで見れば労働者全体での転職者の割合は増加しており、その中でミドル層の転職も一時代前の若年層の転職と同程度の割合まで一般化していることを確認した。ではミドル層の転職者にとって転職は良かったのか、また採用企業にとって良かったのか、今回のコラムではミドル層の転職における質的側面を考察する。

最も分かりやすい待遇面の変化をみると、40歳以上の現役世代では年齢が上がるにつれて賃金が上がった人の比率が減り、逆に賃金が下がった人の比率が高まる。しかし40歳以上の転職者でも大まかに言って1/3以上の人は「賃金が上がった」と答えていて、その比率は「賃金が下がった」と答えた人の比率よりも高い。また特筆すべきは35~39歳層では「賃金が上がった」と答えた人の比率はほぼ半数となり、この数値は25~34歳の年代よりも高いことである。ひと昔前まで言われていた「転職35歳限界説」は待遇面からもすでに過去の話であることが分かる。

転職者サイドからみたミドル層の転職は、年収アップを伴うポジティブな転職が増えていることが感じられた。では企業にとってミドル層の中途採用者はどのように評価されているのであろうか。一般論で考えれば、単純な労働力としてではなく「即戦力」として転職先企業の内部リソースでは賄いきれないスキルやノウハウをもたらす事の出来る人材を正しく採用することが出来れば、受け入れた企業には大きなメリットがもたらされるはずである。しかし、各企業の置かれた状況は千差万別であり、その課題が果たして転職者によって解決できるかは実際に内部に入り当事者としてやってみないとわからない部分も大きい。またそれ以前の問題として、転職者に課題や必要与件が正しく伝えられなかったり、そもそも課題設定が間違っているケースも少なくない。転職という具体的な人の動きを追った調査はいくつか存在するが、転職後の企業サイドの評価にスポットを当てた調査は少ない。ここでは多少ターゲット年齢が高くはなるが、人材サービス産業協議会の「中高年ホワイトカラーの中途採用実態調査(2013年) 」からミドル層を中途採用した人事担当者の満足度の数値を紹介する。

企業サイド(主に人事)から見れば転職者の仕事ぶりに満足する割合は約半数、一方不満と答えた企業は約1割に留まる。これはこの手の調査の結果としては上々の数値であろう。実際に調査の中では、中高年社員の採用を実際に行った企業では、その後、中高年層に対する採用意欲が高まるという結果も紹介されている。これらの事象から言えることは、ミドル層の転職においては企業側の持つ様々なネガティブイメージがネックとなり、採用意欲は若年層と比べると高くないが、実際に採用してみると期待以上の効果を実感する企業も多く、また、転職者にとっても待遇や働き甲斐の面でメリットは大きい。転職者と求人企業をつなぐ私たちヘイゼム キャリアラボとしては、一例でも多くの成功事例を積み上げ、多くのビジネスマンに自由で自立したキャリアの道筋をつくることで、労働市場での需給ギャップの解消、さらには日本全体の活性化の一助となりたいと考えている。

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